2018.09.14
クラウドファンディングの最新事情。
新たな資金調達方法として注目度が急上昇しているクラウドファンディング。とりわけ、購入型クラウドファンディングで大きな成果を挙げているのが、平均調達金額約200万円を達成している「Makuake（マクアケ）」だ。1,000万円以上を集めた事例は120件を突破しており、最高で約1億3,000万円の調達に成功したプロジェクトもある。なぜそこまで多額の資金を集められるのか。そして、「Makuake」での挑戦をきっかけに、企業はどのような成長を遂げていけるのか。同社取締役の坊垣佳奈さんと、チーフキュレーターの森恵さんに話を聞いた。
日本最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」を運営。2013年8月のサービス開始以来、4,300件以上のプロジェクトを掲載し、1,000万円以上の大型資金調達事例は110件以上にのぼる。全国90行を超える金融機関と連携・提携を結んでいるほか、地方の事業者によるプロジェクトも増加傾向にある（数字は2018年8月現在）。
坊垣佳奈（写真右／取締役）
同志社大学卒業後、2006年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。株式会社サイバー・バズのほかゲーム子会社2社を経て、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング（現：株式会社マクアケ）の立ち上げに参画し、取締役就任。大手企業・地方自治体とのプロジェクトを仕掛けるほか、クラウドファンディングという仕組みの広報・PR活動にも精力的に取り組んでいる。
森恵（写真左／キュレーター本部 チーフキュレーター）
慶應義塾大学卒業後、2013年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング（現：マクアケ）の立ち上げから参画。キュレーターとして数多くのプロジェクトをサポートしている。
Paragraph 01
クラウドファンディングとは、群衆（crowd）と資金調達（funding）を組み合わせた造語だとされる。意外とその歴史は古く、100万人以上から10万ドルの建設費用を集めたアメリカの「自由の女神」も成功事例のひとつとして挙げられる。
多くの人から少額を集めて資金を調達するこのスタイルは、インターネットの普及でより広がりをみせるようになった。日本では、2011年の東日本大震災をきっかけに、復興支援を目的としたクラウドファンディングが急増した。この経緯から、「購入型クラウドファンディング」であっても、社会貢献のための資金募集や個人の活動支援といった「寄付」的なクラウドファンディング活用が主流となっていく。「困っている状態を救い、頑張っている人を助けるための仕組み」とのイメージが根強いのはそのためだ。しかし、クラウドファンディングサービスを手がける株式会社マクアケの取締役、坊垣佳奈さんによれば、この発展の仕方は世界的に見て特殊だという。
「海外のクラウドファンディングは、産業支援を目的としたプロジェクトが多数を占めています。むしろ、それまでになかったものづくり系のスタートアップや中小企業を支援する仕組みとして適しているため、世界に広まっていったのです。日本でも、その方向のクラウドファンディングが必要だと考えましたので、マクアケは当初から産業支援を目指してきました」
また、マクアケが、クラウドファンディングを活用した産業支援を推進しようと考えた背景には、「日本には資金や実績なくして新たなビジネスチャレンジがしづらい状況があった」と坊垣さんは語る。
とりわけものづくり企業の場合、新製品の販売には一定の資金、かつ販路開拓にはある一定の実績が必要だ。
企業として一定の実績を積み重ねていれば、金融機関の融資を受けることも可能だが、スタートアップや自社製品を作ったことのないBtoB企業等の場合、融資を受けることは簡単ではない。国が出資している日本政策金融公庫は、中小企業の資金調達で真っ先に選択肢に上がる存在であり、スタートアップ向けの「新創業融資制度」もあるが、必ず融資を受けられるとは限らない。
政府や自治体はスタートアップの成長を後押しする政策を次々に打ち出しているが、まだまだ現実は厳しいといえよう。
Paragraph 02
一方、クラウドファンディングは、設備投資をしなくても製品を売り出せるのが大きなメリットだ。つまり、新たに融資を受ける必要はなく、生産能力に合わせたリターン設計をしておけば、想定以上に売れた場合にも対応できる。たとえば、1ヵ月に100個しか生産できないのに200個売れたとしても、毎月100個リターンするようにしておけばいい。
しかも、マクアケのクラウドファンディングは、「All in（オールイン）」「All or Nothing（オールオアナッシング）」の2つの方式から選べる。より利用者が多いパターンは、目標金額に達しなくても調達できた金額を獲得できる「All in（オールイン）」だ。支援者へのリターンを用意する、受注生産ともいうことができる。もし、「生産にあたり必要最低ラインが決まっている」ものであれば、目標金額に達しないと調達金額が獲得できない「All or Nothing（オールオアナッシング）」を選べばいい。いずれにしても、無駄なリスクを負うことなく商品開発ができ、プロモーションにも繋がるわけで、テストマーケティングとしても有効な手段であることがわかる。
「当然、すべてのプロジェクトが成功するわけではありません。でも、たとえうまくいかなかったとしても、消費者の反応から何が足りないのか知ることができ、製品を改善するきっかけになるはずです」
そう話す坊垣さんは、売れるか売れないかを判断する基準は「消費者の反応がすべて」と断言する。
「従来は、融資依頼先の金融機関や、流通のバイヤーがそこを判断していました。斬新なアイデアや前例のない製品が“足切り”されることも多くありましたが、昔はそれでもよかったかもしれません。しかし、消費者の趣向が多様化した現代においてどんな製品が売れるか、金融機関やバイヤーの皆様が判断するのはより難しくなっているように感じます。Makuakeのプロジェクトでも、私たちの予測よりはるかに多くの金額を集めた事例はたくさんあります。そうした可能性を潰さないため、Makuakeはできるだけ間口を広くして、ビジネスの芽を伸ばしていけるプラットフォームでありたいと思っています」
Paragraph 03
しかし、Makuakeに限らず、インターネットを活用したビジネスは、いかにターゲットへリーチするかが大きな課題だ。無名で実績も人脈もなく、情報発信にリソースを割くのが難しい場合も多いだろう。Makuakeもその点は十分に理解しており、クラウドファンディングを活用した産業支援を実現するには、プラットフォームとしての集客力が不可欠だと坊垣さんは強調する。
「つくり手が有名じゃなくても、人脈がなかったとしても、素晴らしいプロダクトをつくっていればお金が集まる。そういうサービスにならなければ、産業支援につなげることはできません。ですから、『たとえ発信することが苦手でも、Makuakeでクラウドファンディングすればお金が集まります』という世界観づくりには徹底してこだわってきました」
目指してきたのは、集客力のあるプラットフォーム。専属の広報チームを設置してメディアへのアプローチを積極的に行って多ジャンルの媒体での記事化を促し、会員数を増やしてきた（具体的な会員数は非公開だが、数十万人レベルに達しているという）。サイバーエージェントグループならではのノウハウを活かした施策だが、忘れてはならないのは、単にPV数を上げるだけではクラウドファンディングとして成り立たない点だ。もちろん、コンバージョン率をアップするためにページ構成に工夫は凝らしているが、それ以上に効力を発揮しているのが「キュレーター制度」である。
「マクアケでは、各プロジェクトに必ず担当キュレーターが付きます。初めてクラウドファンディングをされる方にはわかりにくいリターンの設計方法から、どういう層をターゲットにするか、どのような打ち出し方をしたら響くかといったPR面までサポートしています」
そう話すのは、チーフキュレーターの森恵さん。ウェブサービスのサポートと聞くと、マニュアル的な対応を想像しがちだが、マクアケの場合はコンサルティングに類するレベル。とりわけ、プロジェクト内容を掲載するページの構成には細かく気を配る。
「ものづくり企業の場合は特にそうですが、思い入れが強いためか、製品そのものや技術面を前面に押し出しがちです。でも、一般的にはわかりづらくなってしまうことのほうが多いので、客観的に消費者が何に魅力を感じるを整理し、効果的な“見せ方”をご提案するのがキュレーターの役割です」
効果的な“見せ方”とは何か。象徴的なのは写真のチョイスだ。生活の中で用いられる製品の場合は、使用シーンを見せるなどして消費者が身近に感じられるよう提案している。いわば、カタログよりも雑誌やテレビ的なアプローチなのである。
Paragraph 04
Makuakeの中で、キュレーターのアドバイスにより効果が劇的に変わった事例としては、滋賀県信楽町の紫香陶房が手がけるコーヒーポット「マイ・カフェポット」が好事例として挙げられる。
「マイ・カフェポット」は、紙フィルター不要のコーヒーポット。挽いたコーヒー豆をそのままポットに入れ、お湯を注げば美味しいコーヒーが淹れられる製品だ。金属も一切使っていないため、コーヒーが持つ旨味成分を最大に引き出すことができる。陶器であるため保温性も高い。
コーヒーポット「マイカフェポット」
非常にイノベーティブな製品だが、それゆえに製品の写真だけでその画期的な仕組みを伝えるのは困難だ。そこで担当キュレーターは、ページトップおよびサムネイルに、コーヒーポットであることがひと目でわかる写真を提案。「最高の一杯のために。信楽焼で楽しむ極上コーヒー『マイカフェポット』」とのキャッチコピーを添え、利用シーンが伝わる写真も盛り込んだページを作成した。
洗練されたライフスタイルに最適なアイテムであることを伝えるとともに、パッと見ただけで使い方も理解できる。テキスト量も豊富で、興味を持った人が詳しく内容を確認できるページとなっている。結果、紫香陶房のプロジェクトは、当初の目標金額50万円の4倍近い195万100円を集めるのに成功した。
もちろん、使用シーンの訴求だけにこだわっているわけではない。そのプロジェクトの背景を理解し、もっとも効果的にアピールできる方法を提案するのが、マクアケのキュレーター制度の真髄だ。それが表れている事例として、石川県小松市の農口（のぐち）尚彦研究所が展開したプロジェクトに注目したい。
ビジュアルだけ見ると、何を扱っているかわからないが、キャッチコピーが効いている。「酒づくりの神様 農口尚彦が復活する。」――そう、これは日本酒のプロジェクトなのである。なぜこの写真をトップに使ったのだろうか。森さんはこう説明する。
「日本酒をPRするならば酒瓶や注がれた酒器、醸造風景などの写真を使うのが普通かもしれません。でも、このプロジェクトは『現代の名工』に認定され、黄綬褒章も授与されている杜氏の農口尚彦さんが、次世代に酒づくりを伝えるために動き出したものだったんです。お話を聞くと、農口さんはいったん醸造から離れていて、このプロジェクトのために再開するとのことでしたので、『酒づくりの神様が最後につくるお酒』と打ち出したほうが効果的だと、西日本事業本部のメンバーは考え提案したそうです」
目標金額を100万円に設定したこのプロジェクトは、20倍以上となる2,070万円を集めることに成功。支援者の数は2,250人にも及んだ。
「ウェブサイトを見る人にとって、入口であるキービジュアルは非常に重要です。一度にたくさんの情報を得ることはできませんので、興味を喚起し、深掘りしたくなるような写真やコピーを配置するようアドバイスしています」
そう話す森さん。力を入れて開発された商品には、随所にこだわりが込められているものだ。しかし、すべてを伝えようとすれば、焦点がぼやけてしまう。もっとも消費者に伝わる部分を前面に打ち出すため、キュレーターは自分の感覚だけでなく、ターゲットに近い年齢層へのヒアリングなども実施している。さらに、これまで手がけてきた4,500件以上（2018年9月現在）のプロジェクトで積み上げてきたノウハウを組み合わせることで、消費者の感覚に寄り添う“見せ方”を可能にしているのだ。
Paragraph 05
消費者の感覚に寄り添うマクアケの姿勢は、新たな利用シーンの創出にもつながっている。たとえば、神奈川県鎌倉市のスタートアップ企業、ヴィースタイル株式会社がヤマハと共同開発したBluetoothヘッドホン「VIE SHAIR（ヴィー・シェア）」のプロジェクトがそうだ。
Bluetoothヘッドホン「VIE SHAIR」
「VIE SHAIR（ヴィー・シェア）」は、当初海外で展開。米国最大のクラウドファンディングサービス、Kickstarter（キックスターター）を活用し、アメリカ向けのプロジェクトを行った。調達したのは約2,000万円。十分に成功したといえる金額だが、日本ではまったく異なった打ち出し方を選択している。
その名のとおり、このヘッドホンの特徴は、近くにいる人と音楽を無線で共有できるのが特徴で、アメリカではそこをアピールした。しかし、同じ製品を持っていなければ共有できないため、これ自体が普及しなければ魅力に感じる人は少ない。森さんは、それよりもファッショナブルな形や快適な装着感に着目した
「ヘッドホンを長時間装着していると耳が痛くなりますよね。でも、ヴィー・シェアは人体に合わせて3Dデザインした“エアーフレーム”であるため、本体が耳に触れないんです。そこで“エアーなつけ心地”というキャッチコピーで、快適なヘッドホンであることを訴求することを提案しました。また、それだけだと装着時のストレスを解消したのみで、マイナスをゼロにすることにしかならないので、デザイン性やサウンドの素晴らしさも付け加えたんです」
そうして生まれたキャッチコピーが、「サウンド、付け心地、デザイン 全てにおいて最高品質。奇跡のヘッドホン」。調達金額は約2,600万円と、Kickstarterのそれを上回る金額を達成している。
ちなみにヴィースタイル株式会社は、第2弾の製品としてワイヤレスイヤホンを開発。再度Makuakeでクラウドファンディングを行い、約5,800万円の調達に成功している。2つのプロジェクトで8,000万円以上――。単純な資金調達ではなく、新たに製品のファンを獲得しながらプロモーション効果もある好事例といえよう。
もうひとつ、Makuakeが製品のターゲット拡大に寄与した事例として、東京大学発のベンチャー、popIn株式会社が手がける「popIn Aladdin（ポップイン アラジン）」を紹介したい。
「popIn Aladdin」は、プロジェクター内蔵のスマートライト。前章で紹介したBluetoothヘッドホン「VIE SHAIR（ヴィー・シェア）」と同様、まずKickstarterで海外に展開。子ども向けの教育的なコンテンツが映し出せることを前面に打ち出していた。子ども用の独立した寝室が一般的なアメリカ向けには最適な戦略で、約1,700万円を調達している。
しかし、ライフスタイルの異なる日本で同様の戦略がマッチするかは未知数だった。popIn社が大人向けのコンテンツ拡充に取り組んでいたタイミングでもあったことから、マクアケは大人をターゲットにした“見せ方”を提案。マクアケのコア会員層が30～50代の男性ということもあり、大人が楽しめるガジェットとして「寝室を最高のエンタメ空間へ。」というキャッチコピーをトップに掲載した。その結果、Kickstarterの調達金額の4倍以上となる約7,480万円を集めることに成功したのである。
こうしたキュレーターのコンサルティングに対し、マクアケの場合別途の費用はかからない。手数料として、調達金額の20％が発生するのみだ（決済手数料5％を含む）。20％と聞いて高いと感じる向きもあるかもしれないが、事前に費用を用意する必要もなく、専任キュレーターの手厚いサポートが受けられ、各種メディアへのPRも代行してくれることを考えれば、むしろ破格といえるのではないだろうか。
Paragraph 06
ここまで紹介したプロジェクトは、確かに製品自体も素晴らしい。しかし、百貨店や大手流通、ネットショッピングモールなどで販売されたとして、短期間でここまでの成果を挙げることができただろうか。愛好家に名前が知られた日本酒の農口尚彦研究所はともかく、無名の事業者の製品が立て続けにヒットすることは考えづらい。
一方で、Makuakeを実施すれば何でも売れるかといえば、そうとも限らないだろう。先述したように、消費者に受け入れられなければまったく売れないことも想定できる。では、「売れる条件」とは何か。“消費の感覚”が変わってきていることを感じている坊垣さんの話は、その回答を示唆するものとして興味深い。
「スーパーで売られる野菜に生産者の顔が入っているように、その製品を誰がどうやってつくっているのか気にするのが当たり前になってきました。一方で、Amazonや楽天などの登場によって、『製品を手軽に買える』時代となったことにより、双方をセットにすることに価値が認められるようになってきたと感じています」
製品の背景を打ち出すこと、そして消費者が手軽に買えるプラットフォームを整備すること。どちらも以前から重要だといわれてきているが、消費者が双方を確認しながら購入しているかどうかを知るのは難しかった。
ならば、双方を同時に実現すればいい――。その発想を具現化したものこそ、産業支援を目指したマクアケのクラウドファンディングなのではないか。キュレーターのサポートにより、消費者目線での魅力的なポイントをピックアップしながら製品の背景を打ち出し、かつ手軽に購入できるプラットフォーム。裏を返すと、製品にかける生産者の思いをいかに消費者へスムーズに届けるかがカギを握っているといえる。
「マクアケをやっていて感じるのは、『本気で良いと思ったものを買いたい』『人と違うものを手に入れたい』という消費者心理です。さらに、そうやって手に入れたものを『自慢したい』『手に入れた喜びを人と共有したい』という思いも感じます」
SNSの普及も、そうした消費者心理を刺激しているのは間違いないだろう。そして、インターネットサービスであるクラウドファンディングは、当然のことながらSNSとの親和性が高い。「今までにない新しさ」「確固とした思いに裏打ちされた良質さ」を持つ製品と、リアルタイムの消費者心理をつなげることで、情報拡散もできるというわけだ。
Paragraph 07
坊垣さんが指摘した“消費感覚”の変化と、その重要なマーケットとして機能しつつあるMakuakeの存在を、国や自治体、金融機関も重視しつつある。
2015年の内閣府地方創生推進事務局の手引きには、クラウドファンディングを「新たなマーケティング手段として可能性が拡大」と明記。大阪府はクラウドファンディング事業者と連携し、普及開発に取り組んでいる。
事業者にとって注目したいのは、金融機関が本気度を高めていることだろう。2017年1月には、茨城の第一地銀である常陽銀行がマクアケと業務提携を締結。クラウドファンディングの調達額に合わせて融資額を決定する、全国の金融機関では初となる協調融資制度を創設した。マクアケはその後も金融機関との提携を加速。2018年9月現在で、全国90行以上の金融機関との連携や提携を実現させている。
この動きは、Makuakeの成功によって、融資が受けやすくなってきたことを意味している。実際、Makuakeでクラウドファンディングを行い、その後金融機関の融資を取り付けた例は多い。想定以上の速さで実店舗オープンにこぎつけたブランドもあると坊垣さんは明かす。
「Makuakeでできることは、見えていることよりもはるかに多いと思います。Makuakeの実績がきっかけで金融機関からの融資に繋がるだけでなく、大きな金額を集めて大手流通から『売り場を提供します』とオファーが寄せられることもあります。Makuakeでは、大手企業の活用も多くなっていますが、Makuakeで成功することにより社内で実績として認められ、人材や予算が多く割り当てられることもあるようです」
最小限のリスクで、ビジネスをステップアップさせるために有効なプロセスとなりつつあるMakuake。Makuakeの場合、プロジェクトを掲載するのにどのような審査があるのだろうか。
「間口を広くする考えなので、必要最低限の審査をおこなったうえで、できる限りご相談に対応させていただきます。支援者にとってのトラブルを未然に防ぐのが私たちの役割だと思っていますので、生産体制を確認する等、多方面から様々な項目をチェックします」
海外のクラウドファンディングでは、よく「届かない」「遅延した」とのトラブルが聞かれるが、Makuakeではほとんど起きていないという。審査を念入りに行うことで、安心して利用できるサービスとしての地位を自ら向上させているといえよう。
「特にプロダクトの場合は、企画段階ではなく試作品が完成しているか、という点も審査でみるようにしています。試作品がないものだと、実際に大きく資金を集めた後、生産が不可能となった際に支援者にとってご迷惑をおかけしてしまうからです。また、試作品は、本気で取り組まなければ完成させられませんので、実行者がいかに本気かをみる一つの目安にもなります。本気で取り組んでいなければ、ユーザーも反応してくれませんから」
本気でつくったものでなければ、消費者に伝わらない――。一見、精神論のようだが、Makuakeを通じて消費者とのコミュニケーションを図ると考えれば、必要不可欠の要素であることがわかるだろう。見方を変えると、魅力的な製品であれば、消費者へのPR等はマクアケのサポートが受けられるわけで、余分なリソースを割かずに販路開拓もでき、中小企業にとってMakuakeは計り知れない魅力ではないだろうか
TEXT：高橋秀和
