「きびそ」を活用することで、新たなシルク商品開発の可能性を切り開いた河合さん。まずは、繊維の知識を活かしてタオルの開発に着手する。ここで注目したいのは、“シルク100%”にこだわらなかったことだ。
「シルクのみでタオルを作ろうとしたら、今ひとつうまくいかなかったんです。でも、このプロジェクトで重要なのは、シルク100%の商品を作ることではなく、廃棄されていた原料をアップサイクルし、より価値ある商品としてお客様にお届けすることですから、そこにこだわる必要はないと判断しました」
いくら内容にこだわっていても、商品として魅力がなければ価値あるブランドとして認知されない。商品が優れていればこそ、そこに使用されている原料や開発ストーリーが生きてくる。だから、タオルの品質にはとことんこだわった。今治タオルの認定を取得したのも、その姿勢の表れだ。
「今治タオルには『5秒ルール』という独自の品質検査基準があるんです。タオル片を水に浮かべて、5秒以内に沈み始めない(吸水性の証)と認定を取得することはできません。その基準をクリアするため、アメリカで最高級の品質を誇るスーピマコットンの中でも究極といわれる『アルティメイト・ピマ』と組み合わせました」
リバースプロジェクトトレーディングとタオル専門店「伊織」がコラボレートして販売している「IYO SILK」
河合さんは、住友商事のあとに10年間勤めた田窪株式会社で、顧客から「こんな糸がほしい」と要望を受けたときに適切なものを提示する役割だったという。だからこそ、アルティメイト・ピマがシルクと好相性だということを知っていたのである。米国スーピマ協会会長と面識を持っているなど、原料を迅速に調達できるネットワークがあるのも大きかった。結果、シルクならではの光沢と滑らかな肌触り、そしてアルティメイト・ピマが持つしなやかな柔らかさとツヤを持った逸品が誕生したのである。
販路の開拓でも、河合さんが持つネットワークをフル活用した。まず、オーナーと10年来の付き合いだというハワイ発の人気鞄ブランド「AQUA BLU HAWAII」とコラボレートし、ハワイ最大のショッピングモールであるアラモアナショッピングセンターで商品開発したアイテムを発表した
「UVカット効果があるのもシルクの特徴ですから、ビーチで有名なハワイだからこそ商品の特性をアピールできると考えました。このテストマーケティングは、愛媛のテレビ局が同行取材してくれ、その結果、全国ネットの30分番組として放映されました」
そして、国内では東京・大阪など全国に21店舗展開するタオル専門店「伊織」とコラボレート。バスタオル16,200円、フェイスタオル5,400円、ハンカチ3,240円の販売価格で、「今治タオルの中でも高額」と河合さんが話すように、まさに最高級の一品。活用の仕方によれば、未利用資源もラグジュアリーな商品に生まれ変わる好例だといえよう。