デザインという領域に軸足を置き、ニュースやイベント情報の発信から求人、コンテストといった個別のニーズに応えるプラットフォームも展開してきたJDN。果たして、自らにどのような役割を課しているのだろうか。
「もともと、私をはじめとするスタートアップメンバーは、『デザインが好き』という思いからメディア事業を始めて、そのメディアを活用してコンテスト事業を立ち上げました。これらを20年以上継続し様々な経験を経た今、デザインやクリエイティブは、この国の将来を左右する重要な要素になり得ると考えるようになりました」
そう山崎さんが話すように、最近はデザインという言葉自体が多様な意味を持ち始めている。形や色、模様、配置といった「見た目」に対する工夫のみを指すのではなく、課題を解決して価値を創造するための手段としても理解されるようになってきた。MORE THAN PROJECTで海外進出を目指す事業者がそうであるように、新たな販路開拓にデザイナーのサポートを受けるケースが増えているのも、その証左といえよう。山崎さんはさらにこう続ける。
「デザインを活用していない事業者さんがデザインを取り入れると、その事業はもっと強くなれると考えています。当社はメディアやコンテストを通して、そうしたビジネスとデザインの関係を促進するファシリテーターでありたいと考えています」
しかし、デザインという言葉には、ある種の高尚なイメージがつきまとうのも事実。事業者の中には、特殊な世界と敬遠する向きもあるだろう。そのあたりを山崎さんはどのように捉えているのだろうか。
「統計ではありませんが、私の体感では95%以上の人がデザインを他人事として考えているのではないでしょうか。そこには漠然とした“壁”があるような気がします。でも、デザインやクリエイティブと聞くと身構える人だって、普段の生活で自然に接しているんです。服、化粧品、文房具、椅子、食器、印刷物、パッケージ、アプリ、ブランドのロゴやお店など、『何となく好き』『使いやすい』といった意識の背景には必ずデザインがあります。デザインは、製造や営業、経理といった職種と同様に事業活動には必須の要素であり、特別なものではありません」
そうした漠然と存在する“壁”を壊したいという山崎さん。諸外国で取材を重ねてきた経験から、その“壁”を打ち破ることで、日本のビジネスはさらなる戦闘力が得られると話す。
「日本のセンスや技術、素材、ディレクション能力に対する評価は、いまだに驚くほど高いですよ。今年のミラノサローネ(※このインタビューは2018年5月に実施)でもいろいろなキーパーソンと話をしてきましたが、改めてそのことを実感しました。一方で、日本人自身はそのことを自覚していても、打ち出し方や伝え方に問題があるのかもしれません。日本が海外とやりとりする際には、言語や地理という障壁もありますが、こうしたコミュニケーションの改善で事業改題を解決できるのであれば、デザインができることは多いはずです」