消費者の感覚に寄り添うマクアケの姿勢は、新たな利用シーンの創出にもつながっている。たとえば、神奈川県鎌倉市のスタートアップ企業、ヴィースタイル株式会社がヤマハと共同開発したBluetoothヘッドホン「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」のプロジェクトがそうだ。
Bluetoothヘッドホン「VIE SHAIR」
「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」は、当初海外で展開。米国最大のクラウドファンディングサービス、Kickstarter(キックスターター)を活用し、アメリカ向けのプロジェクトを行った。調達したのは約2,000万円。十分に成功したといえる金額だが、日本ではまったく異なった打ち出し方を選択している。
その名のとおり、このヘッドホンの特徴は、近くにいる人と音楽を無線で共有できるのが特徴で、アメリカではそこをアピールした。しかし、同じ製品を持っていなければ共有できないため、これ自体が普及しなければ魅力に感じる人は少ない。森さんは、それよりもファッショナブルな形や快適な装着感に着目した
「ヘッドホンを長時間装着していると耳が痛くなりますよね。でも、ヴィー・シェアは人体に合わせて3Dデザインした“エアーフレーム”であるため、本体が耳に触れないんです。そこで“エアーなつけ心地”というキャッチコピーで、快適なヘッドホンであることを訴求することを提案しました。また、それだけだと装着時のストレスを解消したのみで、マイナスをゼロにすることにしかならないので、デザイン性やサウンドの素晴らしさも付け加えたんです」
そうして生まれたキャッチコピーが、「サウンド、付け心地、デザイン 全てにおいて最高品質。奇跡のヘッドホン」。調達金額は約2,600万円と、Kickstarterのそれを上回る金額を達成している。
ちなみにヴィースタイル株式会社は、第2弾の製品としてワイヤレスイヤホンを開発。再度Makuakeでクラウドファンディングを行い、約5,800万円の調達に成功している。2つのプロジェクトで8,000万円以上――。単純な資金調達ではなく、新たに製品のファンを獲得しながらプロモーション効果もある好事例といえよう。
もうひとつ、Makuakeが製品のターゲット拡大に寄与した事例として、東京大学発のベンチャー、popIn株式会社が手がける「popIn Aladdin(ポップイン アラジン)」を紹介したい。
「popIn Aladdin」は、プロジェクター内蔵のスマートライト。前章で紹介したBluetoothヘッドホン「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」と同様、まずKickstarterで海外に展開。子ども向けの教育的なコンテンツが映し出せることを前面に打ち出していた。子ども用の独立した寝室が一般的なアメリカ向けには最適な戦略で、約1,700万円を調達している。
しかし、ライフスタイルの異なる日本で同様の戦略がマッチするかは未知数だった。popIn社が大人向けのコンテンツ拡充に取り組んでいたタイミングでもあったことから、マクアケは大人をターゲットにした“見せ方”を提案。マクアケのコア会員層が30~50代の男性ということもあり、大人が楽しめるガジェットとして「寝室を最高のエンタメ空間へ。」というキャッチコピーをトップに掲載した。その結果、Kickstarterの調達金額の4倍以上となる約7,480万円を集めることに成功したのである。
こうしたキュレーターのコンサルティングに対し、マクアケの場合別途の費用はかからない。手数料として、調達金額の20%が発生するのみだ(決済手数料5%を含む)。20%と聞いて高いと感じる向きもあるかもしれないが、事前に費用を用意する必要もなく、専任キュレーターの手厚いサポートが受けられ、各種メディアへのPRも代行してくれることを考えれば、むしろ破格といえるのではないだろうか。